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 山梨県が策定を進める「やまなしITプラン」に対して、平成15年9月17日、NPO地域資料デジタル化研究会、NPO文化資源活用協会の連名で、要望書を提出した。県当局の意向がハード面でのインフラ整備に傾いていることから、(1)ITプランにおけるNPO情報化の支援策(2)県当局が計画する情報ハイウェーにおいて、デジタルアーカイブによる文化・産業振興など、ソフト面からのインフラ整備を要望した。
 また、同日山梨県と山梨総合研究所が甲府市・紫玉苑で、県内のNPO・ボランティア関係組織を対象に開催した「ITプラン策定に関するヒアリング」に出席し、意見を述べた。

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「やまなしITプラン(基本的な方向)の概要」

1 策定の趣旨(第1章の1)
 インターネットの爆発的な普及、電子メールの活用、携帯電話をはじめとする携帯情報端末の普及など、近年のIT(情報通信技術)の急速な発達により、社会や経済のあらゆる分野で情報化が急速に進展しつつある。
 国においては、平成13年1月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法を施行し、世界最先端のIT国家となることを目指しe-Japan重点計画を策定するなど、電子政府の構築やIT環境の整備、IT利活用の推進などの取り組みを行っている。
 しかし、国民一人ひとりが豊かさを実感できる社会の実現には、身近な地域における情報化 施策の推進が一層必要となっている。 
  こうしたなかで、本県でも、総合的なIT利活用を推進するとともに、高速情報通信基盤の 整備を行い、全県的な情報化の推進を図るため「やまなしITプラン」を策定する。 
(山梨県庁ホームページより)

 


やまなしITプラン策定への要望書

 

 

平成15年9月17日

特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会
特定非営利活動法人文化資源活用協会


やまなしITプランで、県民参加によるデジタル地域文化の創造を

 私たちは、住民パワーによるNPOとして、地域の有形無形さまざまな資料のデジタルアーカイブ整備を行い、インターネット上で公開する非営利活動を展開しております。この実践のなかから、私たちは山梨の21世紀の地域社会創造のためには、さまざまな分野での情報を行政そして県民がリアルタイムで共有し、地域社会のさまざまな課題を解決するために協働することが重要であるとの確信に至りました。このためには、様々な分野における過去から現在に至る地域資料をデジタル化し、かつインターネットを通じて共有し、かつ県民がこうした知的資産を、まちづくりのため創造的継承することが緊急の課題であります。この情報を「ためる」「つなぐ」「いかす」という「情報創発」型(*1)のサイクルを通じて、かつてのような上意下達による地域づくりではなく、県民主体の新たな地域作りへ変革することを期待し、「やまなしITプラン」の策定に以下の内容を要望致します。

(*1)「情報創発」とは、「複雑系」の科学でいう「創発」(emergence)を情報分野に適用した考え方。これまでに与えられた個別情報の相互連鎖作用によって予期しなかった全体的な特性が現れることをさす。この情報の相互連鎖作用により、新たな全体の価値創造がひらめきのように起こってくる。これが情報創発社会です。


[要望項目]

1.NPO,ボランティア情報化の積極的支援

(1)高度情報通信基盤の整備と無償開放

 国内最高水準の高速・大容量インターネット網(以下高度情報通信基盤という)の整備を促進し、必要とするすべてのNPO,ボランティア団体が無償もしくは低廉な料金で利用できるようにする。

(2)NPO総合支援ポータルサイトの開設

県は(1)で構築する高度情報通信基盤の上に、NPOの運営に必要な情報や、個々のNPOが開示する情報に県民が一元的にアクセスできる「NPO総合支援ポータルサイト」を構築し、その利用を県内のNPOに無償で開放する。このポータルサイトの構築・運営には、NPOを活用することも検討する。

(3)ネットワークコミュニティ形成への積極的支援

 上記(2)のポータルサイトにおいて、個々のNPO内部の電子メールによる業務連絡や電子文書管理、スケジュール管理などのインターネット対応型グループウェア機能を無償で提供し、ネットワークコミュニティの形成を積極支援する。またネットを通じて、NPO相互の協働を推進するため、NPO相互のグループウェア機能やフォーラム機能を提供する。

(4)NPO総合支援センターの構築

 NPOは誕生からまだ歴史も浅く、情報機器の活用が不得意な団体も多い現状を鑑み、高度情報通信基盤の上に、NPOへのサービスインフラとして先進的な情報機器の開放利用、あるいは貸し出し、またIT研修の場の提供など総合的にNPOの情報化を支援する「NPO総合支援センター」を設置する。上記(2)に示すNPO総合支援ポータルサイトの運営母体としても検討する。

 

2.情報ハイウェーで戦略的デジタルアーカイブの整備活用

 山梨県における「情報創発型社会」の構築をめざして、さまざまな分野で地域資料のデジタルアーカイブ整備を行い、県民が高度情報通信基盤を通じて活用できるような環境を整備するべきであります。
 デジタルアーカイブの使命として過去から現在の様々な分野の文化遺産、知的資産を収集、蓄積し、百年単位の広い視野で継承、活用できるようにすることがあげられます。今後の情報創発社会の進展の中では、デジタルアーカイブによって、情報共有、情報活用が進み、歴史と伝統に根ざした文化や産業経済活動の再評価と創造的継承が生まれ、ここから地域振興の新しい可能性が広がります。
 やまなしITプランにおいては、その戦略目標として、

  1. 多様化する地域社会の中で、経済、文化芸術、教育、学術研究など幅広い分野にわたって、山梨が自らの「アイデンティティ」を確認する
  2. 山梨の歴史伝統に立脚した山梨の「ブランド」の確立を図り、情報発信する−

の2点をふまえ、特に以下の諸点を「やまなしITプラン」に盛り込むよう要望致します。

(1)やまなしITプランにおける総合的なデジタルアーカイブ推進体制の位置づけ

 「やまなしITプラン」の中に、行政、教育、文化、福祉、医療、産業など様々な分野における過去および現在の情報資源の「創造的継承」と「多角的活用」が可能とするように、総合的かつ長期的な視野に立ったデジタルアーカイブ推進体制を位置づける。

(2)県・市町村行政文書のデジタルアーカイブ化の推進

 さまざまな地域課題は県民自らが解決するという発想の転換を図り、また県民が地域づくりに主体的に取り組むための重要インフラとして、県庁あるいは自治体が保有するさまざまな行政文書・資料(文書・写真・動画等)のデジタルアーカイブ化を推進し、かつITプランで構築される高度情報通信基盤上で県民が一元的にアクセス利用できるようにようにする。

(3)市町村合併又は分権化に伴う地域資料の散逸防止

 市町村合併や行政権限の再配分に伴い、旧市町村固有の行政文書や地域文化資産が散逸する危険が危惧されている。これらの地域固有の情報資源をデジタルアーカイブ化により保存・継承していく措置を講じる。

(4)県立図書館の電子ライブラリー化の推進

 県立図書館等は歴史的に貴重な文書や行政文書の保存機関である。「やまなしITプラン」では、これらの機関を高度情報通信基盤と直結した電子図書館として、保有文書等のデジタル・アーカイブ化とネットワーク公開を推進する。

(5)地域におけるデジタルアーカイブの整備・促進

 山梨県内には、豊かな歴史と伝統に根ざした文化や産業がある。こうした地域が歴史的に継承してきさまざまな情報資源を見直し、自分たちの郷土に誇りをもてるようにすることが今後の地域活性化のために重要である。このために、地域に埋もれた様々な資料を掘り起こし、かつデジタル化し、積極的に高度情報通信基盤を通じて公開することで、山梨の魅力を再発見するきっかけづくりとし、地域活性化に結びつけることが重要である。具体的には、方言、祭り、習俗、文化財など地域に点在する情報資源のデジタルアーカイブ化を推進していただきたい。

 この推進にあたっては、行政やNPO,企業、大学などが連携するオープンな実施体制が望ましい。また、民間企業が所有する情報資源についても、デジタルアーカイブのために積極的に活用する方策を検討していくものとする。

(6)博物館、美術館などのデジタル化促進・教育コンテンツ活用

 県立の博物館、美術館、文学館をはじめ、地域の公立・民営の博物館・美術館の収蔵品等のデジタルアーカイブ化とデジタル・コンテンツの教育分野での利用活用を推進する。具体的には、以下のような施策を実施する。

 「県民がいつでも、どこでも楽しむことができるユビキタスミュージアム構想の推進」

 IT時代に対応した新しい博物館・美術館・文学館のあり方について、利用者に真のバリアーフリーを実現する「ユビキタスミュージアム(※)」の構築を推進することが今後の個性的な地域作りの上で重要である。

 「ユビキタスミュージアム」は、現実の館内施設のバリアーフリーと同時に、収蔵品に関する様々な情報の利活用について、時間や場所の制約を開放し、「県民のだれもが、いつでも、どこでも」博物館の情報にアクセスできる究極のバリアーフリー型博物館を実現するものである。
 ユビキタスミュージアムは、本物とデジタルが融合した総合的なデジタルアーカイブ構築が、その基盤となる。具体的には、以下の4項目を実現していただきたい。

 (※)ユビキタスとは、いたるところに存在する(遍在)という意味。インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境を指す。

1)高度情報通信基盤と連携したデータセンターの構築

 高度情報通信基盤上に総合的なデジタルアーカイブの受け皿となる「データセンター」を構築し、利用者には光ファイバー、XDSL、CATVインターネット、ホットスポットなどの多様な経路により、高速、かつ効率的に、アクセスできるようにする。

2)1次資料のデジタル保存

 博物館等が収集するあらゆる有形無形の1次資料について現物保存と同時に、デジタルデータ化の措置を講じる。
 デジタル化されたデータ保存により、劣化による文化遺産喪失の問題に対処出来るばかりでなく、出来る限りデジタルでの公開に留意すれば原物の汚損劣化を防止できる(保存と公開の両立)。また、貴重な文化遺産は出来る限りCAD(※)データも採取し、物として複製、復刻するために備えるのが望ましい。

 (※) CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計の略)とは、コンピュータを利用して機械、家屋などの物の設計を行うシステム。

3)ネットワーク公開

 博物館が収蔵するあらゆる1次資料について、デジタル化されたものは、高度情報通信基盤で全面公開し、学習の用に供することとする。

 この作業により、従来博物館の展示スペースの制限により実現できなかった全収蔵品の公開が可能となり、施設内でのモノ・コト展示をネットワーク上で補完することができる。さらにネットワークに対応することにより、24時間365日地球規模のノンストップネットワーク博物館となり、21世紀社会のニーズに対応することが可能となる。
 デジタル化された1次資料は、目録などの副次資料と連動して、利用者の検索活用の便宜を図るよう整備するよう要望します。

4)NPO等県民パワーの活用

 失われつつある文化遺産を、調査、発掘、収集、保存等のすべての作業を博物館スタッフだけで実施するには、人的、予算的、時間的な制約のなかで十分な成果を上げることが困難であると思われます。デジタルアーカイブの整備には資料のデジタル化から公開まで大量のマンパワーを必要とするので、その整備にあたってはNPOや県民参加等を効果的に活用していただきたい。デジタル化について専門的な技術を要するものについては企業や大学の協力により行います。

 また、ネットワーク上に開かれたユビキタスミュージアムの運営にあたって、行政、NPO、企業、大学など運営協力者が集える「産学官民協働」のオープンな運営組織を設立することを要望します。

(7)デジタルアーカイブ事業による新たな地域産業の振興と雇用創出

 地域デジタルアーカイブ事業により地域文化の情報発信と新産業の創出を目指す。あわせて、地域デジタルアーカイブ構築・流通事業のための新たな人材雇用を積極的に推進する。
 既に他県で試行されている伝統的コンテンツのデジタルアーカイブ化の例としては、伝統工芸によるデザインをアーカイブし産業・工業製品の設計・デザインへの応用を図る取組み(京都市)などが知られる。またデジタル技術を活用した観光地・施設の紹介等(GISなどを応用した観光資源開発)による地域振興は相当広く実践されている。
 これらは多言語化を図ることにより、富士山をはじめとする山梨のブランドを国際的な情報発信ともなり、新たな顧客誘致の切り札となる。

(8)デジタルライブラリアン人材育成・教育

 デジタルアーカイブを地域で推進していくためにはデジタルアーカイブ構築ならびに維持管理に携わる人材育成が必要である。これらの人材として「デジタルライブラリアン」、あるいは「デジタルアーカイビスト」などの専門人材の資格認定制度を県が全国に先駆けて創設する。

(以上)