ロゴをクリックすると、ホームに戻ります

HOME 活動履歴 デジタルアーカイブ NPO法人概要 リンク集

第1回山中湖村情報創造館選書ツアーの記録

第1回山中湖村情報創造館選書ツアーの記録
NPO地域資料デジタル化研究会編
日 時:平成15年5月16日(金)
山中湖村参加者:午前7時半・高速バス山中湖発
デジ研参加者:午前8時11分電車甲府駅発
解散:新宿駅午後5時半
参加者:山中湖村住民(6人)、デジ研会員(8人)

選書ツアー視察研修会場:
第1会場:株式会社日販図書館サービス(東京都板橋区高島平)
第2会場:ジュンク堂書店(池袋駅前)
第3会場:紀伊國屋書店新宿南店(新宿駅新南口)

<選書ツアー概要>


 選書ツアーは、山中湖村からの参加者が高速バス、甲府からの参加者がJR中央線で上京し、板橋の地下鉄西台駅で現地集合して始まった。
 第1会場では、ツアー開始初顔合わせの参加者もあり、この場を借りて参加者相互が自己紹介を行った。冒頭で小林理事長が以下のようにあいさつした。
 「山中湖村情報創造館は公立であるが、NPOによる民営の運営をやることになった。開館に先だって住民の皆さんで選書をやることになった。今までの図書館は既成の図書目録でどこの図書館でも似たような本が並んでいるといった状態だった。山中湖では図書館のたましいである本はわれわれの手で入れたいと考え、選書ツアーを企画した。本日は第1回目で参加者には公費なし、すべての費用は自己負担で、仕事のある参加者は休みをとって参加してきている。
 まず本日最初の会場では、図書館の運営の下支えをしている会社のあることを知っていただき、その実際のようすをみせていただく。このあとはさらに自分たちの読みたい本、図書館に置きたい本を選んでいくので、しっかり勉強をしていきましょう。」

 視察研修では、日販図書館サービスで、従来図書館職員が担当していた本の装備(図書館の書誌データ=MARC作成や、本を配架するための背ラベル作成など)業務が外部委託されている実際の現場を見学した。
 ジュンク堂書店では、「図書館以上に図書館らしい内容を実現した日本一の売り場面積の書店」という業務内容を見学した。
 紀伊國屋書店では、実際に店内で陳列されている書籍の中から、山中湖村で蔵書にしてみたいと思う本を参加者が思い思いに選定する作業を体験した。

<視察研修の詳細>

第1会場:日販図書館サービス

 日本の主要取り次ぎ(出版物の問屋)の一つ。(株)日本出版販売のグループ会社で、主に図書館への図書、視聴覚資料の納入、選書支援、バーコード添付などの資料装備請負、図書館目録の元データ(MARC)作成などの業務を行っている。図書館のための本屋さんであり、図書館業務のサポートを行っている。
 参加者は、同社各部署の担当者から実際の仕事現場で説明を受けた。


MARC作成作業の視察

●図書館情報製作課の見学
 親会社である日販から毎日送られてくる新刊書の書誌データ(NS−MARC=ニッパンマーク)を製作している。2002年の実績では、国内で年間出版された約7万点の新刊図書、視聴覚資料のうち同社は6万7500点のデータを作成、さらに既刊分1万2000点(全国の図書館からMARC作成依頼を受けた資料も含む)を合わせ合計7万9000点のデータを作成した。このMARCは、全国の図書館が購入し、図書館職員が書誌データを作成する手間を省き、業務効率化に役立てている。
 NS−MARCでは300項目の書誌データを入力しており、1人当たりの1日15冊程度を処理している。
 図書館情報製作課では、書店の流通にのっていない単品の「地域資料」のMARC製作も受け付けている。
 MARC製作の他に毎日新刊本の抄録を作成し、「ウイークリー出版情報」として刊行している。これは図書館職員が、新刊本から購入するべき資料を選定する参考書として利用されている。

●公共図書館課の見学
 図書館の「図書購入から装備・納品」までの作業を一貫して作業代行している。
 公共図書館がこのアウトソーシング・サービスを利用する場合の流れ
(1)図書館職員は選書リストを作成し、公共図書館課に渡す。
(2)公共図書館課では、リストをもとに日販流通センターに発注する。
(3)日販流通センターは、各出版社から図書を取り寄せ、公共図書館課に納入する。
(4)公共図書館課では、注文図書をプールしておき、@背ラベルの作成と貼付A汚損防 止フィルムのコート−の装備を行い、図書館が利用者に貸し出しする直前段階までの 準備を行う。
(5)公共図書館課では、一連の装備作業を完了すると、依頼主の図書館に注文図書を一 括納入する。
(6)以上のアウトソーシング・サービスを利用することで、図書館は貸し出し装備のための手間のかかる作業を合理化することができる。 

 選書ツアーの見学時には、某市立図書館の「夏休み課題図書」の装備を作業中であった。

●視聴覚課の見学
 視聴覚資料はビデオ、音楽CD等である。最近は図書館でも視聴覚資料の貸し出しが普通に行われている。(全国で視聴覚資料の貸し出しで先鞭を付けたのは山梨県石和町立図書館である。)ビデオでは、まだVHSテープの比率が高いが、DVDが徐々に比率を高め、新しく開館する図書館はほとんどDVDを購入している。

第2会場:ジュンク堂書店本店

 世界最大級という2001坪の売り場面積(9階建て)、常時150万冊の在庫を持つ書店。大きさだけではなく常に新しいサービスを模索している。平成13年度全店舗の販売額実績全国8位(237億円)。
選書ツアーの一行は、店内で自由行動し、主に「図書館以上に図書館らしさの実現を目指している」というインテリア、サービスを視察した。店のモットーの通り、店内は重厚な書棚に本が陳列され、アカデミックな雰囲気に浸りながら、本を見ることができる。在庫図書も多く、本好きなら1日いても楽しめる仕掛けだ。9階までの各フロアには読書コーナーが設けられ、陳列された本を自由に読むことができるよう配慮されていた。その理由は、店側の説明によると、「お客様が購入する本をじっくり選定していただくため。ただし、お客様の中にはまるごと全部読んで帰られる"猛者"もいるが、それもサービスのうち」という。
 また、1階にはリファレンスコーナーが特設され、ジャンル分けされた各フロアにも専門分野のリファレンスに答えられるよう司書相当の知識を持った店員を配置しているという。
 見学に応対していただいた福島副店長の説明で印象的だったのは、「社長の方針は、若い店員に徹底してお客様に本を売る喜びを教えること」という社員教育の方針だった。

第3会場:紀伊國屋書店新宿南店(タカシマヤタイムズスクエア内)

 平成13年度全店舗販売額実績全国第2位(1133億9500万円)の総合出版物販売店。紀伊國屋書店は直接図書館などに販売する額が多い。また要所の取り次ぎや、文化事業、出版事業、図書館システム開発、図書館運営支援など、出版流通全体に対して業務を展開している。
 第3会場では、地上7階建ての全フロアを使って、参加者全員で選書体験を行った。
 選書の手順は以下のように行った。

(1) 参加者をデジ研参加者と山中湖参加者がペアになるよう5チームに分け、各チームにハンディスキャナーを渡した。
(2)ハンディ機は本の書名、著者、出版社、金額などの書誌情報を刻んだバーコードを読み取る装置である。ボタンを押すとレーザー光線が書籍のバーコードに照射され、瞬時に書名などのデータを装置内のメモリーに読み込む仕掛けである。
(3)紀伊國屋書店からは、特別に店内の本を物色する作業の許可をもらい、参加者は胸に「山中湖村選書ツアー選定中」とのワッペンを付けて作業に当たった。
(4)今回の選書は体験ツアーなので、特に選書基準を設けることなく、各参加者の考えで自由に読みたい本をスキャンして、選書リストに取り込む作業を行った。
(5)選定結果は、午後4時半〜5時半までの1時間で合計1083冊を選定しました。
 ハンディにより、本の表紙に印刷されたバーコードをスキャンするという簡単な操作だが、各自が住民のためにこんな本を購入したいという思いのなかで、相当苦戦したようだった。しかし、児童図書を担当された浅川玲子さんチームは軽々と400冊(1分間に6冊以上のペース)をピックアップされ、選眼力を遺憾なく発揮されていた。


ハンディスキャナーによる選書体験(紀伊國屋書店)