2 縣廰の眞顏

青空高く南に富士を望み、がつちりと立つのが山梨縣廰である。工學博士佐野利器氏の設計。どことなくアカゼミツクの感じがする。玄關は道志産の大理石貼。
山梨にこんな建築は過ぎたるものだと言ふ人もあれば、いやこれで相應しいのだとがんばる人もある。何にせよ數年前百餘萬の巨費を投じ、甲府城内の一角に建築された現代式鐵筋コンクリートの三層樓で縣會議事堂、武徳殿、縣立圖書館、教育會館、甲府郵便局、甲府警察署等と相共に、近代都市の景觀が充分に認められる。
山峽の盆地、瞳憬の觀光地帶としての山梨は、この建物がシンボライズする如く、永遠に、モダンに、堅實に發展して行くことであらう。

(古屋保吉)


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